2020.12.26(土)
フレンチブルドッグが突然痙攣(けいれん)を起こしたり、小刻みに震えていて驚いた、ショックを受けた、不安で眠れなくなってしまったというご家族の声があります。
犬も寝ぼけることがありますから、寝ている間に小刻みに体が動くことがありますが、病的な痙攣や震えは寝ている時に起こるばかりではありません。
日常の中で突然起こることもあれば、生涯に一度だけということもあります。家族にとって不安が募る症状ですから、もしもの時の対処法やとるべき行動を知っておくことで獣医師との連携を強めてゆきましょう。
愛犬が突然普段と違う症状を見せたり、家族が不安を感じるような様子を見せるとき、まず最初に頭に浮かぶことは皆同じです。
多くの方がこのような不安を抱きます。
・動物病院を受診すべき?
・今すぐ急患で駆け込むべき?
・それとも自宅で様子を見ても大丈夫?
痙攣や震えはなかなか判断が難しく、受診の見極めも一言では説明できません。これは獣医師であっても同じ返答です。
痙攣や麻痺はまだまだ医学的な解明がされていないからです。
例えば数十秒で自然と治まれば軽度であるとか、泡を吹きだすような場合は急患で受診をという目安もありません。その上、発症の頻度やタイミングも予測がつきません。
ただ健康かどうかという質問には、健康で正常とは言い切れない症状ですから、何等かの病気ということになります。
痙攣や震えの治療は、動物病院を受診したその場で症状が現れない、獣医師が症状を確認できないことも病気かどうかの判断を難しくさせる原因です。
ただ家族の不安を少しでも解消するために、動物病院を受診すること、今後同じ症状がみられた時に家族がするべき対処法を相談しておくと安心です。
フレンチブルドッグに限らず様々な犬種で痙攣の症状がみられることがあります。犬種や年齢、生活習慣などそれぞれに違っているので、一律でこのような場合に痙攣が起こると説明することもできません。
痙攣の原因で一般的なものは下記です。
〇神経系の異常
〇一時的な疲労
〇ストレス
〇加齢や痴呆
若く健康な犬に突発的に起こる痙攣は神経系のトラブルが原因と判断されることが一般的です。ただ現状の動物医療では神経系の異常の原因を特定したり、手術によって完治を目指すことは現実的ではありません。
症状の程度にもよりますが、定期的な薬の服用で症状を緩和したり、発症を予防することが一般的な対処法です。これは動物に限ったことではなく人間の医療でも同じ判断が下されています。
家族にとって不安が残る対処法ではありますが、愛犬にリスクの高い治療を受けさせるよりも現実的といえるでしょう。
痙攣の程度によっても病気かどうかの判断に迷いますが、下記の症状がみられる場合、専門医や神経系の治療に詳しい獣医師への相談を考えてみてください。
〇突然痙攣が起こる
〇体を硬直させている
〇飼い主の声に反応しない、まるで聞こえていない様子
〇飼い主と目線が合わない、目の焦点があっていない
〇泡を吐いたり、嘔吐をする
〇失禁をする
〇頻繁に痙攣や発作が起こる
〇日常生活に支障がある
〇痙攣中に過度な凶暴性を見せる
痙攣や発作を起こすタイミングは深夜早朝が多いという飼い主の声も多々あります。ただこのタイミングについても医学的な根拠はなく、理由も解明されていません。
いつ、何が原因で痙攣が起こるのか予測ができないこともこの問題の厄介な部分です。
フレンチブルドッグが痙攣をしている時、家族は突然のことにパニックを起こしてしまうでしょう。でもこの時の対処法がその後の治療の判断に大きく影響をします。
不安に駆られる時間ですが、冷静に対処をしましょう。
まず家族がすべきことは下記です。
〇痙攣が始まった時間、治まった時間をメモに残す
〇嘔吐、失禁などどのような症状があるかを確認しメモに残す
〇再発した場合、前回の痙攣からどのくらい時間が空いたかを確認し、メモに取る
〇可能であれば動画を撮影する
〇愛犬に無暗に触れない
〇嘔吐がある場合は頭を平らにして、嘔吐物による窒息を防ぐ
〇周囲に衝突すると危険な物がある場合は移動させる
〇かかりつけ医に連絡をして指示を仰ぐ
リスト化するとあまりにたくさんの項目に、もしもの時にこのすべてを実行できるか不安と感じるでしょう。でもどれも落ち着き、意識をすれば一連の行動の流れで実践できます。
特に痙攣の持続時間や最中の様子、再発の頻度は今後の治療において獣医師が必要とする大切な情報です。
動画を撮影することは決してかわいそうな行為ではありません。動物病院を受診しても、痙攣中の様子がわからなければ獣医師も曖昧な対処法しか提案ができません。
体を突っ張るのか、それとも暴れまわるのか、嘔吐があるのかなどを明確に獣医師に伝え、情報を共有するための手段として動画はとても有効です。
痙攣を起こしている最中の愛犬には家族の声も耳に届いておらず、体を思うように動かすこともできません。家族が愛犬を落ち着かせようと抱きあげたり、体に触れることでかえって愛犬をパニックにさせてしまうこともあります。
家族はこのような場面では愛犬の危険を回避することだけを念頭に置き、まずは痙攣が治まるまで様子を見守ることが原則です。
症状や愛犬の持病、年齢によって具体的な対処法は異なるので、かかりつけ医と相談をしながらもしもの備えを万全にしておくと安心です。