2020.06.21(日)
こちらは獣医師及びブリーダー向けの内容となっておりますのでその他の方には興味のない内容となっておりますのでスルーしてください。
まずはじめに、ホルモンとは何かという所から始めると読む気も失せてしまいますので結論から先に記載していきたいと思います。
欧米では一般的に行われている検査で
について日本ではまだまだ一般的とは言い難く実施している動物病院や施設はごく少数ですので海外のデータをもとに出来るだけ分かりやすく記載します。
下に何点かプロゲステロン数値による交配日の例が記載されていますが文献などをまとめて簡潔に要約しています。
1.9ng以下→発情(ヒート)は始まったばかりかまだきてないんじゃないか?発情だと思うならまた3.4日してから検査してね!
2ng~5ng→発情(ヒート)中だよ。LHサージが起きている最中で48時間以内に排卵するから交配するなら用意をしといてね!
5ng~9ng→今まさに排卵しているよ!今から卵子が成熟して授精可能になるまで48時間程度かかるので交配はまだだよ!
10ng~18ng→自然交配又は新鮮精液による交配なら今すぐ交配してね!20ngを過ぎたら妊娠は手遅れになるよ!
18ng~24ng→凍結精子や冷蔵精液を使うなら今のタイミングだよ。開腹人工授精か子宮頸管内人工授精するなら今のタイミングだよ!
25ng以上→交配しても妊娠する可能性は低いよ!
40ng以上→正常に発情排卵サイクルが起きて正常に排卵が終わったよ。妊娠してるかどうかはこの数字では分からないよ!
とりあえずこの数字だけを覚えておけば初心者でも交配最適日を見逃すことはありません。
あとは自然交配か新鮮精液での人工授精の場合、手慣れたブリーダーであれば上手く対処してくれるでしょう。
初心者同士の交配(犬仲間同士など)の場合、オス犬が上手く交配できるかどうかはやってみないと分からないのでせっかく検査していても交配が成立しなければ妊娠も成立しませんので、ダメだったパターンで何頭かオス犬候補を選んでおいて臨機応変に動けるといいと思います。
なぜ凍結や冷蔵精液を使用する場合は授精方法によって交配日のタイミングが違うのかという疑問をお持ちになると思います。
これは凍結精子や冷蔵精液の活性時間の短さにあります。新鮮精液は通常、膣や子宮内で48時間程度活性があり膣内から子宮内や卵子までたどり着くまでに48時間程度かかる場合があるといわれております。凍結精子や冷蔵精液ではその半分程度の時間しか活性していないので卵子が成熟したタイミングでより卵子に近い場所に精子を投入する必要がありより厳密な時間調整が必要であるということから卵子が成熟し下降してきたわずかなタイミングを狙うためということになります。
新鮮精液の場合は少々時期が早かろうがしばらく生きてるんだからいいだろうという考え方で10ng~18ngの間ならいつでもいいよということになります。
個人的な見解としてですがおすすめしないことは膣内の粘液に試験紙などを入れ色で犬のプロゲステロンを計測する専用の試験紙や膣内の電気抵抗によって数値を計測する診断キットがありますがこれらはやろうとしていることはほぼ同じですが再現性の低さが問題で正確な評価を得ることが難しいと考えています。
私自身も20年以上前からある電気抵抗の検査装置を20年前に持っていましたが同じ結果が得られず使わなくなりました。検査自体が安価で簡潔という所が魅力なので参考程度に実施するにはいいかと思いますが気休め程度でしょう。
以下は検査結果が出てからの交配予測日です。
当たり前ですが外注など検査機関に出した場合は検査結果の数値を聞いた日じゃなくて採血したときの数値だから注意してね!
2ng以下→この数値では交配日の予測を行うことは難しい!
2ng~4ng→3.4日後に再検査がおすすめだが4~5日後が1回目交配適日6~7日後が2回目交配適日
4ng~5ng→3~4日後が1回目交配適日 5~6日後が2回目交配適日
6ng~7ng→2~3日後が1回目交配適日4~5日後が2回目交配適日
8ng~9ng→1~2日後が1回目交配適日3~4日後が2回目交配適日
10ng以上→今すぐが交配適日
このように発情の兆候さえ確認していれば1回の検査でおおよその目安がたつ検査であることが分かります。さらに精度を上げるには複数回の検査を行うことが大切です。
ただホルモンバランスが崩れている場合、10~20ng程度まで上昇してもその後数値が下降してしまい排卵が不完全(卵子が未成熟なまま)な形で終わってしまうことがあり、発情(ヒート)終了後は妊娠が成立しているか否かに関係なく40ng以上まで上昇する数値のため、正常な発情サイクルであったかという検証のためにも、フォローアップの確認をしておくとなおいいでしょう。またそのような排卵異常やホルモン異常や発情サイクルの長い犬や無発情の犬に対し正常なホルモンバランスに調整するホルモン治療もあります。
2種類の性腺刺激ホルモン(FSH、LH)によって発情誘起と排卵誘発を使い分けてプロゲステロン補完療法によって妊娠を維持し流産を予防することが可能です。
流産をする場合はプロゲステロン濃度の低下が要因としてあげられます。高プロゲステロン値は子宮蓄膿症の発症要因としてあげられますので単純に数値を維持するのではなく高度な管理が求められます。
↑の表では/Lとなっていますがおそらく/mlの表示間違いです。
1ng(ナノグラム)=3.18nmol(ナノモル)で換算できます。
日本ではng/ml表示で検査結果が通知されることが一般的ですのでngで覚えておけばいいと思います。